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ポイント:ITスキル標準、ITSS、経済産業省、達成度の指標、人材スキル

ITスキル標準(ITSS)のひろがりと課題


 中小企業の経営者のみなさんは、どのような基準でシステム構築する際にベンダーをきめているのであろうか? 「これまでもお願いしていたからその継続で・・・」、「見積もりが安かったから・・・」、「魅力的な提案をしてくれたから・・・」など、現状ではいろいろな理由があると思う。だた決定的な基準というものは残念ながらない。それはシステム構築が労働集約的なサービス業であるという特性から、システムの構築(つまりサービス)が完了して結果が出てみないと、依頼が満足ゆく結果だったのか判断できない場合が多いからだ。現に昨年の6月に実施された「日経ITプロフェッショナル」の調査では「エンジニアの半数はプロといえない」との結果ででている。私もエンジニアの端くれとして「君はプロか?」と問われたら、得意な分野は「ハイ」といえるが、「苦手な分野」はモジモジ曖昧な回答をしてしまいそうである。(私がモジモジしていたらそれは苦手分野の可能性が高い。・・・こんなことを書いていいのかな?)

 このような基準不明確なIT業界に、2年前にひとつのモノサシが登場し、今ようやくひろがりを見せ始めている。それが「ITスキル標準(ITSS・ITスキルスタンダードの略)」で、経済産業省が定めた、個人のIT関連能力を職種や専門分野ごとに明確化・体系化した指標のことである。

 e-WordsによるとITSSはITサービスの分野を、「マーケティング」「セールス」「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジメント」「ITスペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」「ソフトウェアデベロップメント」「カスタマサービス」「オペレーション」「エデュケーション」の11分野に大別し、それぞれの専門分野ごとに達成度指標、指標ごとに必要とされるスキル、熟達度を7段階で定義している。「達成度の指標」の項目では、例えば、「業務内容、複雑さ」「プロジェクトの規模」などといった項目ごとに指標が設けられている。また、達成度指標で提示された指標を実現するために必要とされる具体例が「スキル、熟達度」の項目で提示されている。

 ITSSで最も期待されているのはやはり、ベンダー(ソフトハウスなど)の選定である。また自社がITSSを導入していれば、自社の人材スキルもつかめるので、プロジェクト編成の際、適材適所のチーム編成ができる期待がもてる。しかし登場から2年でかなり改善されたとはいえ、問題点もまだ当然残っている。

 問題点としてはいくつかあるが、「日経コンピュータ3/7号」では問題点として次の5つをあげている。

・ITSSの正しい理解が浸透しておらず誤解が生じている。
・ITSSのさだめる職種ではすべてのIT人材をカバーしきれていない。
・スキル・レベルを第3者が評価・認定する仕組みがない。
・担当したプロジェクトの規模でレベルが決まるため中小企業のIT人材には不利である。
・一部のIT教育事業者が宣伝文句で「ITSS準拠」をうたい混乱が生じている。

 特に経済産業省が定めたスキル標準とはいえ、それを認定する機関がないのは問題であると思う。情報処理技術者試験などと連携してもらえると客観的な評価ができるのだが、現状では各大手ベンダーがITSSを参考に独自のITスキル標準を定めている例が多い。これでは、結局またスキル標準がバラバラになり、ベンダー同士のスキルの比較は難しいという状況になってしまうのではないであろうか?

 ITSSはよくお客さんから尋ねられる「どんなITベンダーに頼んだらいいの?」という問いへの答えに是非なっていってもらいたいと思う。まだITSSはひろがりを見せ始めたところである。今後もこの動きに注目したい。

 
参考文献

 「日経コンピュータ3/7号」

関連コラム
ITSSの動向と情報処理技術者試験との関係 2006年11月06日記述
ITスキル標準(ITSS)のひろがりと課題 2005年3月28日記述

2005年3月28日 宿澤直正


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