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ポイント:J-SOX、金融商品取引法、日本版SOX法、内部統制、実施基準、監査基準

「J-SOX実施基準の見通し」について思うこと


J-SOX実施基準の見通しに関する情報

 日経コンピュータ8/21号に「J-SOX実施基準は具体例なしの公算大」との記事があった。実際には公開される実施基準をみて、どのように利用できるのかを考えてみないとその使い勝手はわからない。ただ、この記事の内容に関して、少し考えてみたいと思う。

 今回の記事のポイントはいくつかある。その大きなものとしては「J-SOX実施基準の具体性」と「公開時期」であると考える。

 まずは、関心が高い「公開時期」である。私が今年の3月に「日本版SOX法」について講演を行なった時、「あくまでも噂ですが・・・」という前置きで「早ければこの3月末にも実施基準がでるかもしれません」と言ったのを覚えている。当時も不確定な要素が多くて、「あくまでも噂ですが・・・」「これは米国SOX法の例ですが・・・」「これは監査基準から読み取ったのですが・・・」などと、前置きを苦労しながら話したのを覚えている。

 「早ければこの3月末・・・」言ったのは、自分の世の中を見る目の甘さを恥じるばかりである。まさか、この時期になっても実施基準が公開されていないとは予想もしていなかった…。

 米国SOX法の状況を調べていたので「早く準備を始めなければ、企業は準備は大変である」という認識が、講演時のトーンに出ていたのではないかと思う。日経コンピュータの記事では「草案公開は早くて10月」との見解がのっていた。断言はできないが、この「早くて10月」というのが当初の予定通りかどうかというと、どうもなさそうである。

なぜ実施基準はなかなか公開されないのだろう

 記事からのいろいろ読み取れるが、私の印象では「じっくり検討しているため時間がかかっている」との印象を受けた。実施基準の公開が遅れれば当然、企業に負担がかかる。実施時期は金融商品取引法の成立により、2008年4月1日以降に始まる事業年度から適用される。つまり、2009年の決算から適用ということが決まっている。

 期限が決まっている以上は早く準備を始めたいのが人の気持ちである。そんな状況で実施基準の発表がなかなか発表されないものだから、正直、焦りの気持ちが企業に出てきても仕方が無いと思う。

 しかし、希望的観測かもしれないが、実施基準の公開が遅れているのは「企業の負担を減らす」配慮も大きいと思う。以前のコラムで、アメリカではSOX法にかける予算が当初の予測を大幅に超えてしまったいるため、対応を簡便にするための工夫が行なわれていることを書いた。この工夫とは、さまざまな基準をハッキリ明確にすることである。

「具体例なし公算大」から思うこと

 ここで、日経コンピュータの記事に書いてあることが気になった。「具体例なし公算大」の情報である。記事によると200ページ以上の草案を廃棄して作り直しているとの事である。その理由は「企業が求めているのは評価方法ではなく、内部統制の枠組み」だということで、評価方法をQ&A方式で約100項目記述した原案を廃棄したらしい。

 たしかに評価方法だけがクローズアップされてしまうと、それにあわせた内部統制システムを構築しなければならず、負担が大きくなる。枠組みならば、それを現在の内部統制システムに、うまく融合させることでこれまで各企業が各々工夫してきたことが無駄にならない。

 「評価方法ではなく、内部統制の枠組み重視」の考え方は私も賛成である。ただ、必要最低限の内部統制の整備範囲は明記していただきたい。「売上高の何%以上」という数値はもりこまれる見込みだそうだ。

 企業はとしては、重要な勘定科目は何かという基準は実施基準でキッチリ決めることができて(つまり範囲は基準で明確になる)、それから先の内部統制のシステムは、実施基準の枠組みを参照しつつ、実施基準にあまり縛られることなく、これまで準備してきた、もしくは既存の内部統制のシステムを有効に活用するというのが、もっとも負担の少なくなるJ-SOXの準備だと考える。これをするためには、どんな方法があるのか、自分でも検討を始めることにする。

参考

「日経コンピュータ8/21号」

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2006年08月28日 宿澤直正


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