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ポイント:Web2.0、参加型、ネットの民主化、個人の情報発信、運用スピード、ユーザー参加のリスク、著作権、Web2.0的サービス

Web2.0の落とし穴とWeb2.0への批判


Web2.0によるネットでの「民主化」

 3回続けて、Web2.0に関してのコラムを書いてきました。また動きの激しい分野ですのでまた定期的な知識、状況のメンテナンスは必要になると思いますが、一旦ここで一息ついて、次はまた別のテーマで書いてきたいと思います。

 というわけで、Web2.0シリーズの一端の〆は、やはりリスクです。ブログのビジネス活用でもリスクを考えましたが、Web2.0でもリスクというものが少しずつ話題になっています。とうぜんブログはWeb2.0の旗手ですので、ブログのビジネス活用におけるリスクはそのまま引き続いて注意する必要が有ります。

 ブログのリスクとも当然関わってきますが、Web2.0時代におけるリスクということで考えて見ます。Web2.0のキーワードはユーザー参加です。ユーザー参加で生まれる「集合知」に大きな期待が寄せられています。

 「三人寄れば文殊の知恵」ではありませんが、インターネットで寄せられる情報は3人どころの騒ぎでは有りません。一体どれだけの情報が寄せられるのか想像もできません。この状態は、いたるところでユーザー主体の付加価値が生まれていることを意味します。私はこの状態を「ネットでの民主主義がすすんでいる」と考えています。

 ネットは元々みんなものです。ですからもとから「民主主義」と言えば確かにそうです。ただ、実際にインターネット界にガリバー(帝国)が存在しているのも事実です。Yahooや楽天といった存在です。ここまでネットを普及させたのは、このガリバーの存在があったらからこそと思います。ところが、Web2.0の登場とともに、ガリバーへの風向きも少し変わってきていると思います。

 YahooとWeb2.0企業の代表とも言われるGoogleのトップページを比べると大きな違いに気付くのではないでしょうか? どちらも検索ポータルですが、Yahooの画面を見るとなんとなく情報量がとても多いと感じると思います。多くは広告です。一方のGoogleの画面は検索のためのキーワードを入力するテキストボックスがポツンとひとつあるだけです。とてもシンプルです。

 Yahooはポータルサイトとしてのトップページに情報を集中させ、その価値を最大限に高めています。以前、私のサイトのコラムがYahooトップページにあるトピックスの参考ページとしてリンクされた時は、驚きのアクセス数でした。それだけ、Yahooのトップぺージには力があるのです。

 Googleもトップページに情報を集めればトップページの付加価値を高めることができます。しかしGoogleは、それをしていません。なぜなら、Google AdSense をイメージしていただければ分かりやすいと思いますが、トップページに広告を載せるのではなく、広告を載せるための仕様を公開し、みんなのサイトに広告を載せているのです。みんなのサイトを巻き込む事によって、トップページには載せられないような膨大な数の広告を載せる事を可能にしているのです。

 みんなを巻き込んでいるということで、非常にWeb2.0的な発想です。少し話がそれましたが、ネットの世界で、Web2.0の考え方によってユーザーが直接情報を発信する環境や仕組みが整ってきています。これにより、一部のガリバー(帝国)を中心としたピラミッド型ではなく、フラットな形になってきています。これが私の考える「ネットの民主化がすすんでいる」ということです。

Web2.0においてのリスクも見えてきた

 Web2.0の特徴である「ユーザ参加」により、ネットは活況を呈してきています。ブログやSNSの利用者が年々増えているのは、みなさんご存知だと思います。みんながネットに参加することにより、大きな付加価値がこれからいろいろ生まれていくと思います。

 ただ「ユーザー参加」による負の側面もやはり考えておく必要があると思います。Web2.0では、それぞれのユーザーの意識が非常に大切になります。民主主義では、政治の責任は国民一人ひとりにあります。Web2.0のネット世界でも同じ事が言えます。みなが平等に情報を発信できるということは、発信した情報に対しての責任も負わなければならないということです。

 これを忘れてしまうと、政治が腐敗するように、ネットの世界も疑心暗鬼の闇の世界になってしまいます。こう考えるとWeb2.0においてのリスクもいろいろと見えてくるのではないでしょうか? 今後もいろいろな落とし穴に気付いていくと思いますが、今は3つあげさせていただきます。

1)運用に関して生まれる落とし穴

 Web2.0では、構築より、その後の運用が難しいです。これはインターネットの世界では常識ですが、情報発信の担い手の中心がユーザー主体に変わることによって、ますます運用がクローズアップされていくと思います。

 Web2.0は「永久のβ版」といわれます。ユーザーからのフィードバックを速やかに検討し決断する、また、市場性を加味して頻繁な機能追加を行なうなど、「運用」はルーティンではなくコンテンツ、またはビジネスそのものになってきます。

 このスピードについていかないと、付加価値のないコンテンツになってしまいます。このスピードについていくには、ヒトの問題、コストの問題など様々な課題をクリアしながら運用していく必要があります。コンテンツが陳腐化、マンネリ化すると、おそらく「政治の腐敗」のような現象が起きるのだと思います。

2)ユーザー参加で生まれる落とし穴

 ちょっとくどいですが、「Web2.0はユーザ参加のアーキテクチャ」です。逆に言えばユーザ参加が無ければ付加価値を提供できないないのです。ユーザが参加することによりダイナミックに成長するコンテンツがWeb2.0の醍醐味です。

 ただ、ユーザーといっても様々な人がいます。考えが合わない人がいて当たり前です。このヒトの多様性を認めてこそWeb2.0は有益なものになります。しかし、考えが会わないヒト同士が対立する事は、現実世界でもよくあります。当然これまでのネットでも多くありました。今後も発生するでしょう。

 このような、対立をいかに調整していけるか、また、ただ単なる対処的な調整ではなく、多様性を認めあるようなネットの世界を作っていけるのかが、Web2.0の大きな課題だと思います。今後はますます、ネットマナーの重要性が増大していくと思います。

3)著作権・知的所有権などの落とし穴

 現実世界でも、問題になっていますが、名誉毀損・営業妨害・肖像権の侵害、著作権の侵害と引用などに関する問題は、Web2.0時代の大きな課題だと思います。

Web2.0という言葉に対する批判

 Web2.0に関しての落とし穴(リスク・課題)を書き出してみましたが、Web2.0という言葉に対する批判があるのも事実です。前にWeb2.0は実態のないバズワードの存在であると書きました。それに付随して、以下のような批判があるようです。

 これらを言っている方々の気持ちもよくわかります。またこういう意見がどんどん出てくるのもWeb2.0のよいところだと思います。そして、それに対して自分の意見を書けるのもWeb2.0のよいところです。

 Web2.0という言葉には実体は無いのは事実です。しかしWeb2.0の考えにもとづいたのか、実際にサービスを構築したらWeb2.0的なものになったかはわかりませんが、サービスは確実に存在・成長しています。

 人々が確実に便益を得ている以上は、サービスは残ります。Web2.0という言葉が残る残らないという議論はどうでもいい事だと思います。実態としてのよいサービスがこれからもどんどん出てきてくれればよいのです。だって、Web2.0はバズワードですから。

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2006年09月18日 宿澤直正


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