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ポイント:ベンダー、ユーザー、困った客、不当な要求、良好な関係、情報化戦略、用語統一

ベンダーにとって困った客って?


困った客ってどんな客

 日経ソリューションビジネス11/15号で「困った客の傾向と対策」という記事があった。ベンダーからの視点で困った客というものが書き出されている。特集にある詳細な事例はどれも大変参考になるものばかりである。以前SEだった私は、これらの記事を読んで「そこまでひどいユーザーはそんなに居なかった」と思ったが、おそらく、それは私が幸運だったのであろう。

 事例紹介されているものは、「不当な値下げ要求」「戦略なしで提案だけ求められた」「当て馬にされた」等である。「当て馬にされた」に関しては、以前、時事コラムでも「受注できない提案機会の増加と対処」で少し書かせていただいた。

 記事の中で詳細な事例紹介の他に、番外編というものが内容の列挙だけされている。その中には私が実際に体験したことも多かったので、意見を付け加えてみる。

困った客(番外編)

(1)「素人のレベルで説明してほしい」と言われてもレベルが不明確だった。

 これは私もよく体験することである。ただ、これはベンダー側にも責任がある。説明する相手のレベルを事前に確認することは、ビジネスを行ううえで、とても大切なことである。

 ただし、お客は自分たちのITレベルを把握していないことが多い。つまり、お客さんのレベルの確認をしたとしても、意志の疎通を図るのは難しいのだ。ましてや事前にしっかりコミュニケーションをとることなく、お客さんの望むレベルなど分かるわけがないと思う。

 よって、事前のコミュニケーションをしっかりとる、また話を進めていく上でレベルの軌道修正をしていくという努力が必要であると感じる。

 これも以前のコラム「IT用語連発がコミュニケーションをダメにする」で書かせていただいたが、「周りが使っているために、自分も意味を理解していない IT 用語を使うことがある」という人は7割を超えているそうである。それが実情である。

 もう一つ、論点は違うがベンダーとユーザーで用語の統一は絶対に必要である。企業独特の用語は必ずある。例えば「在庫」という言葉ひとつをとっても、微妙に指し示す範囲が異なる場合がある。ここを合わせておかないと、当然、理解しあえることはない。

(2)当社の決算書を見て「御社は利益出ているよね」と値下げを要求された。

 これは、さすがに体験したことがない。待ったく的違いな要求である。このような要求をする客とは付き合わないほうが良いと思う。

(3)客の社内のパワーゲームのために、急遽方向性が変わった

 私が体験したのは、パワーゲームというよりは管理者と現場のシステムへの認識の違いだった。比較的、現場に近い管理者の方だったので安心してヒアリング・開発をおこなっていた。ところが出来上がったシステムはやはりどちらかというと管理者よりのシステムになってしまった。その結果、現場からの不満が噴出し、管理者はそれを抑えられず、大幅な見直しを迫られた。

 このように書くと、「困った客」なのかもしれないが、これも今考えれば、ヒアリング時に情報化戦略をちゃんと提示(確認)できなかった私の力量不足だったと反省している。

困った客を作り出さないために

 いろいろ自分の経験を思い出してみると、困った客を作り出してしまわないための努力がベンダーにも必要だということがわかってきた。お客はITに関して、ベンダーよりも情報も経験も不足している。ベンダーはそのことに留意しなければいけないと思う。また、今はコンサルタントという立場であるので、ユーザーの啓蒙という活動は重要になってくると思う。

(参考)日経ソリューションビジネス11/15号

関連コラム
ベンダーにとって困った客って? 2005年12月19日記述
好かれるベンダーに向けて 2005年9月5日記述

2005年12月19日 宿澤直正


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