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ポイント:プロジェクトマネージャ、プロマネ、プロジェクト・マネジメント・オフィス、PMO、PMP

プロマネは大切な仕事です 


 プロジェクトマネージャ(以下プロマネ)の国際資格「PMP」は国内においてここ5年間で9倍に増えたそうだ。情報法処理技術者試験の高度区分「ブロジェクトマネージャ」も注目度が高く、プロマネの必要性はみなが感じているところである。ところが一方で、若手SEに聞いたプロマネの志望者はおよそ10人に1人だそうだ。とはいっても、SEのキャリアパスでは、順調に成長すれば、やがてプロマネに行き着く。

 私がSEだった頃、巨大プロジェクトのプロマネを見て、本当に大変だと思った。ソフト開発、ネットワーク、セキュリティ、データベースといったテクニカルな資格と違い、プロマネは資格を取ったからといって出来る仕事ではないと思った。5〜10人ぐらいの少人数のプロマネなら、それほど知識、経験がなくても何とかできると思う。現に私にも出来ていた。ただ、これ以上人数が増えてくると、プロマネの知識、経験はもちろんだが、経営力、政治力、人の特性を見抜く力、組織のバランス感覚など、様々な能力が必要になってくる。

 スキル標準として定められている内容だけで、プロマネとしてやっていけるのであろうか? 少し古いが日経コンピュータ7/11号の特集は「プロマネ残酷物語」としてプロマネが実際に体験した辛い話が載っている。ケースが3つ載っていたが、ケース2は自分も体験した話である。

 タイトルは「サポート得られず便利屋に」である。メンバーは何も悪意があってプロマネをサポートしないのではない。自分の責任範囲で手一杯になってしまうのだ。プロマネはプロジェクトをタスクごとに細分化し、それぞれのリーダーに割り振っていく。しかし、細分化する際に、どうしても見落とす作業や、お客との認識の違いで新たに派生する作業がある。ある程度まとまった作業であれば、スケジュールの再調整や、新たな人のアサインという対応をとることも可能であるが、些細な作業だとプロマネが自分でしてしまう事がある。しかし些細と思っていた事はたいてい些細でない事が多い。唯でさえ、仕事が多いプロマネが、そのような便利屋的な仕事までしていては潰れてしまう。

 この話はほんの一例だが、これに似たような「残酷物語」はとても多い。プロマネの問題はIT業界の構造的な問題を象徴していると思う。ただ、プロマネにアンケートをした結果、「やりがいはあるが、支援の体制や待遇に不満」という人は多い。この意見の「やりがいはあるが・・・」というところに救いを見たような気がする。

 プロマネは大きな船の羅針盤である。プロマネが方向を間違えるとそのプロジェクトは迷走を始める。逆言えば、プロマネが正しい道を指示すれば、そのプロジェクトは顧客満足、収益性の高いものになるだろう。ただ、その責任をプロマネ1人に負わせるのは間違っている。ここで大切なことは、プロマネが望む、支援体制の強化や、待遇の改善である。特に支援体制の強化の一策として、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を設置するベンダーが増えている。PMOの本来の役割は、プロマネを後方から支援する事である。しかし、現状では、PMOが有効に機能している話しをあまり聞かない。むしろ、現場を見ずに的外れな指摘をしてプロマネを混乱させている事もあるようだ。

 しかし、PMOの有効性は別途議論して、プロマネを支援しようとする部隊があることは評価したい。今、プロマネは不足している。みながプロマネになりたいと思うような、支援体制と待遇改善を模索していく必要があると思う。

参考「日経コンピュータ7/11号」

2005年8月15日 宿澤直正


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