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ポイント:説得と納得の違い、コミュニケーション、図解、「情」と「理」のコミュニケーション、物語

相手を納得させるコミュニケーション


説得と納得の違い

 図解コミュニケーションのメリットとして相手を「説得」させるのではくなく「納得」させるということを、以前コラムに書きました。では説得と納得の違いとは何でしょう。ディベートでは、どちらがロジカルな思考・発言をして、相手を説得できたかと言うことで勝負します。このディベートは「説得」の勝負と言えるかもしれません。ビジネスの場面ではディベート的なやり取りで優劣を決め意思決定をしなければならない場面が沢山あります。

 ただ、すべての交渉をディベート的に行うことはビジネスの幅を狭めてしなうのではないかと思います。ではディベート的でない交渉とは何でしょうか? それが「納得」のコミュニケーションだと思います。

 「説得」とは情報を伝達する側の考えを相手に理解させようという行為です。悪く言えば、自分中心の一方的なコミュニケーションと言えるかもしれません。説得したヒトが勝ちで説得された人が負け、という雰囲気すらあります。ただ、人は他人に説得されることを心理的に拒む傾向があります。

 一方の「納得」とは、相手を操る行為ではなく価値観を分かち合うものです。相手と価値あるものを分かち合おうという態度に対して人は安心感を覚えます。なぜ図解が「納得」のコミュニケーションかと言うと、図を通じて相手に考える余地を与え、相手に自分自身で「自分の腹にこちらの考えを落としてもらう」のです。ここで「価値観の共有」が生まれ、それが信頼に変わっていきます。

 ビジネスの場面では、相手を「納得」させるといったやり方は「ぬるい」と感じる方もあるでしょう。しかし「説得」されたという感じはどこかに違和感を覚え、それが時間とともに大きくなっていきます。しかし、「納得」は相手と同じ価値感を共有するので両者とも満足します。これは長く続く満足です。

 早急に相手に意思決定を求める場合は「説得」、これから長くよい関係を築いていくには「納得」がよいのかもしれません。

相手を納得させるには

 この話をすると、では相手を「納得」させるにはどうしたらよいのですか?と聞かれます。納得のスキルとは「情」と「理」のコミュニケーションをバランスよく行うことです。ちなみに「説得」は「理」のコミュニケーションが中心になります。

 「情」のコミュニケーションとは、「あうんの呼吸」や「以心伝心」などの「いわれなくてもわかる」「雰囲気で理解する」といった曖昧な形のコミュニケーションと言われます。ただ、私はもう少し範囲を広げて考えています。「相手の気持ちにうったえるコミュニケーション」という表現が適当かもしれません。相手の気持ちにうったえると、相手の気持ちが動きます。その場の空気が読みながら、相手を動かす高度なアナログ的コミュニケーションと言えます。

 一方の「理」のコミュニケーションとは、「ロジカルな思考にもとずくコミュニケーション」です。どちらかというと、日本人が苦手とするコミュニケーションです。そのため欧米では当たり前の「ロジカルシンキング」を今日本では多くの人が学んでいます。ただ、少しそれが行き過ぎている例もあるようです。「理詰め」で話しすぎると相手は、意思決定をさせられた気になり、なんとなく肯定はしたものの、どうも腑に落ちないということがあります。これが「説得された状態」なのでしょう。ただし、ビジネスの世界では、ロジカルな思考にもとづく情報は必須です。

 そこで、相手を納得させるには「情」と「理」のコミュニケーションをバランスよく行うことが大切であるという話しに戻ります。

「情」と「理」のバランス

 このバランスに関して私は「情」→「理」→「情」の流れでコミュニケーションを行なうとよいと考えています。福沢諭吉さんは「人間社会は情が7割、理が3割」といったそうです。ただ、ビジネスの世界では「情が6割、理が4割」ぐらいのバランスが一番良いと思います。

 このバランスを先ほどの「情」→「理」→「情」の流れで考えると、最初と最後の「情」が2割、真ん中の「理」が4割ぐらいのバランスです。では、具体的にはどうすればよいでしょう。これはあくまでも私がよく行なう方法なので、いろいろな意見があると思いますが、紹介してみます。

 最初の「情」は「関心をもってもらう」ことです。関心なので相手の心にうったえる必要があります。ここでよく使うのは「物語」です。自分なり、相手なりを主人公にして物語を作ります。物語は相手に関心を持たせます。最初にその時に話したい内容を抽象的な物語で一通り話して、相手の関心をこちらに向けてもらいます。

 次は「理」です。正確な情報と論理的な思考にもとづいて話をしていきます。ここの部分では自分の主観はあまり入れないようにしています。そうする事によって、最後の「情」で相手が自分で判断できる材料を提供していきます。

 そして、最後の「情」ですが、ここで使うのは図解(絵)です。もちろん「理」の場面でも図解は必要で、有効ですが、難しい情報を分かりやすく伝えるために図解することが目的です。最後の「情」で使う図解は、相手に考えて欲しいところを少し曖昧にして書きます。そうする事で相手が自分自身で考え、答えを見つけ出す支援をすることが目的になります。同じ図解でも「理」の場面と「情」の場面では目的が異なると考えています。相手は、最終的には自分で考えた答えなので、その答えに納得しているはずです。

 もちろん、こんなに上手くいくことばかりでは有りませんが、このような流れを意識してコミュニケーションをとろうと努力をしています。難しいですけど・・・。

参考
「相手を納得させる技術(高橋浩一著)」

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2006年12月04日 宿澤直正


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