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ポイント:メンタルヘルス、うつ病、ストレッサー、IT業界のストレス、変化の激しい時代、カウンセラー、カウンセラー、ホワイトカラー・エグゼンプション

なぜ、メンタルヘルスが必要なのか?


IT業界にあるストレッサー

 今年、最初のコラムは今年、私が取り組みたいテーマの一つであるであるメンタルヘルスです。昨年の日経SYSTEMSの12月号で開発現場のメンタルヘルスという特集がされていました。それによると、7割以上の企業で心の病による1ヶ月以上の休職者が存在しており、この割合は年々増えているそうで、とくに技術者の割合が高いそうです。(社会経済生産性本部調査)

 情報システムの開発現場では「心の病」にかかる人が多いです。特集ではITエンジニアのストレッサーについてピックアップされていました。ストレッサーとは「心や体に、なんらかの負担をもたらす刺激。ストレスの原因となるもの」のことです。特集で上げられていたITエンジニアのストレッサーには以下のようなものがあります。少し極端な例も有りますが、決して外れてはいません。


過重労働

 短納期が当たり前。障害対応や仕様変更など急な仕事も多く、休まるヒマがない。一日中、端末に向かうプログラマは喫茶店で息抜きもしにくい。

コミュニケーション不足

 タスクに分割して仕事が個人にアサインされる場合が多い。同じチームでも相談したり、助け合ったりすることが減ってきた。

顧客との人間関係

 必要な情報や人を顧客が出してくれない。それなのに遅延したり、バグがあると責められる。

派遣先での人間関係

 発注元の社員は先に帰宅してしまい、自分だけ残業せざるを得ない日が多い。それなのに問題が起きると自分が責められる。

職場の人間関係

 技術の変化が激しいため、問題が起きたときにベテランが頼りにならない。ベテランの側も仕事に追われており、後進の面倒を見る余裕がない。

年齢限界説

 技術者として一線で働ける限界は30〜35歳との説がある。目前の仕事に問題がなくてもキャリアの閉塞感を感じる。


 この一連のストレッサーを見るとIT業界の過酷な労働状況が見えてきます。ただ、これは決してIT業界だけの話ではありません。私が顧問先としてお世話になっている他業種の企業でも似たような状況は起きています。

決してIT業界だけの問題ではない

 IT業界は、特に技術の変化が激しく、「技術の変化が激しい」事が「ベテランが頼りにならない」という状況を生み出すと先のストレッサーの部分にもありました。ただ、これは決してIT業界だけではありません。今は様々な事柄の変化が激しく、過去の事例がそのままでは使えない世の中になっています。これは「お手本がなく自分で解決しなければならない」という状況が非常に多くなっていることを指します。

 最近、コーチングがいろいろな場面で注目されています。コーチングは質問型のコミュニケーションを使い、相手に取るべき行動を自ら選択してもらう・・・という事です。他人から言われたことではなく、自分で気付いた事に対しては人は素直に動く事ができます。これはコーチングの大きなメリットですが、穿った目で「企業でコーチングが必要とされる側面」を考えると「上司も経験がなく、ピンポイントの指示が出せない」ということもあると思います。

 今、時代は「みんなが自分で考え、自分で判断して、自分で行動する」時代になっていると感じます。いわゆる「指示待ち」では、「作業」はできても「仕事」はできないのです。私が使う「作業」とは「言われた事を確実にこなす事」です。一方の「仕事」は「自分で考えて、何か付加価値を生み出す事」です。

 昔は「仕事」よりも「作業」の割合が多かったです。しかし、今はそれが逆転してきています。これが大きな時代の変化だと思います。決まったやり方がない、これまでの事例が使えないことで、自分で道をつくり、それを進んでいかなければならないのです。それは大変な事です。当然、失敗も付きまといます。これが、今のストレス社会の大きな原因だと思います。決してIT業界だけの問題ではありませんね。

なぜ、メンタルヘルスが必要か

 このようなストレス社会の弊害が「心の病気」です。身体的な病気では「早期発見」「早期治療」が大切です。これは「心の病気」も同じです。しかし、身体的な病気は全てではないにしても、定期健診や人間ドックで発見する事ができますが、心の病気にはそうはなかなかいきません。

 最近では企業にカウンセラーを設置している例も増えてきましたが、整備が網羅的に進んでいるとはいえません。カウンセラーを組織において社員の心を恒常的にケアするには、当然コストがかかります。企業からすれば「そんな余裕はないよ」という声が聞こえてきそうです。しかし、カウンセラーをおくだけのコストがかかっても、「社員の心の元気」を保てれば、それが会社の為になります。社員が心の健康を崩した場合、会社にとって様々なリスクが考えられます。カウンセラーをおくことは会社経営におけるリスクへの対処の一つだといえるのです。

 そのリスクへの対処が「会社のため」にも、「社員のため」にもなるのです。もちろんカウンセラーをおくけは、「社員の心のケア」は万全というわけにはいきません。大切なのは現場です。現場での「心の病の兆候を見つける」ことが最も大切な事です。しかし、ここが一番難しいところでもあります。私も自分自身で「うつ病」を経験しました。このような「心の病気」が少しでも減るよう、私も、いろいろ勉強していきたいと思います。このテーマで私の想いを書いているブログもありますのでよかったら立ち寄ってにてくださいね。

 今、「ホワイトカラー・エグゼンプション」が話題になっています。ホワイトカラー労働者(従業員の内、頭脳労働に就いている人)に対する労働時間規制を適用除外(エグゼンプト)することです。「残業代0」が話題になっていますが、私は、むしろ「うつ病など心の病気の増加」を懸念しています。労働形態の多様化は歓迎ですが、間違った方向に使われないことを願っています。

参考
日経SYSTEMS 2006/12号

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2007年01月08日 宿澤直正


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