名古屋商工会議所のIT専門相談でした。その際に出た話です。
ある人に「この文章、AIで書いたでしょう」と指摘された相談者が、かなり落ち込んでいたのです。
実際にはその方が自分で書いた文章だったそうです。そして「AIで楽している」と思われたのが嫌だったそうです。
ここで重要なのは、その文章がAIで書かれたかどうかではなく、読み手に「固い」「よそよそしい」という違和感を与えてしまったという点です。
私も日々の業務で生成AIを活用していますが、このツールは使い方次第で大きく結果が変わります。
商工会議所での相談業務でも、企業の方々から「AIで文章を作ったけど、なんだか自分らしくない」という声をよく聞きます。
実は、これは人間が書いた文章でも同じことが起こります。
丁寧に書こうとするあまり、定型文のような硬直した表現になってしまうことは、私もよくあります。
先日、ある企業で社内メールでやり取りしている文面を拝見する機会がありました。
そこには「貴殊のご清栄を心よりお慶び申し上げます」といった形式的な挨拶文が並んでいました。
文法的には正しいのですが、日常的にやり取りをしているメールとしては、明らかに距離感が合っていませんでした。
これは生成AIの問題というより、状況に応じたコミュニケーションのバランスを見失っている状態です。
違和感を与えない文章をAIで書きたい場合、私も気を付けていることがあります。まず、相手との関係性を意識することです。
初めてのお客様なのか、長年お付き合いのある方なのかで、文章のトーンは変わってきます。
次に、自分の言葉で一度声に出してみることです。
実際に口に出した時に違和感があれば、その文章は書き言葉としても硬すぎる可能性があります。
そして、生成AIで出力された文章をそのまま使うのではなく、自分なりの表現に置き換える作業が必要です。
AIはあくまでも下書きを作るツールであって、最終的には自分の言葉で仕上げることが大切です。
IT専門相談の現場で痛感するのは、技術をどう使いこなすかは、結局のところ人間の判断と感性にかかっているということです。
生成AIは確かに便利なツールですが、相手の顔を思い浮かべながら、その人に伝わる言葉を選ぶという作業は、やはり人間にしかできません。



